印鑑の知識 by 上野印房手彫り印鑑職人上野雄一のブログ

手彫り印鑑とは?

彫刻方法の不正表示が問題になり、印章業界でも公正取引委員会と業界団体が指針を示しました。
その定義と特徴ををごく簡単にまとめました。(法的拘束力はありません)

手彫り印鑑
一切機械を使わずに全ての工程を職人の手で作った印鑑です。
全ての工程を手で行う分、職人の力量や手間の掛け方で出来が大きく左右されます。
しかし、技術の習得に10年もかかり、大変な作業をしている職人が、手を抜くとは考えられません。
手彫りのよさは機械のように画一的にならないことと、高額な分、手間ひまを惜しまず注げることです。
手仕上げ印鑑
粗彫りという作業を機械で行い、手で仕上げした印鑑です。
彫刻機は作った印影と寸分違わず彫刻します。
腕の良い職人が印影を作り、手で仕上げれば、特に整ったという意味ではよい印鑑が出来ます。
ただ一方で整いすぎて画一的になる傾向もあります。
また、機械を使えば素人でもある程度の印鑑が出来てしまうため、 ほとんど機械彫りと変わらないものまで「手仕上げ」に含まれてしまいます。
機械彫り印鑑
機械だけで彫った印鑑です。
手間を省き安くすることを目的としていますので、見た目にも味気なくバランスの悪い印影になりますし、 同一の印鑑が出来る危険性もあります。 しかし、機械彫りと表記している店はほとんどないのが現状です。

「手彫り」表記の現状

現在、機械で彫られた印鑑が「手彫り印鑑」として当たり前のように販売されています。
これは一部の悪徳業者というわけではなく、老舗の印章店まで広く行われていることです。
「機械を使ったっていいものは出来る。だから手彫りと言っていいんだ」
印章店の中にはこのような主張をする人も多いです。

「機械使ったっていいものは出来る」
後でも書きますが、これは間違いではありません。
しかし、「だから手彫りと言っていいんだ」
これは詭弁です。
機械で彫った印鑑が、いいものなら、手で彫ったことになる、そんなわけはありません。

我々印章店は自店の主張ではなく、お客様を向いた分かりやすい表記をしなくてはなりませんが、
現実は「手彫り印鑑」という言葉に法的な拘束力がないため、
機械を使っていても、自由に「手彫り」という言葉が使われています。

「手彫り」はいいのか?

「手彫り」は彫刻方法の表記で、良し悪しの表記ではありません。
しかし「手彫り」と「彫刻機」にはそれぞれ特徴があります。

手彫りのデメリットは、難易度の高さです。上手く彫るのが難しいのです。
しかし、ゆえに画一的になりにくい、手作業の温かみが出やすいという特徴もあります。
また、難しいことを続ければ、職人の腕はが上がります。
それに手彫りをしようというのは、それなりの心意気があるはずです。

一方、彫刻機は作業を効率化することが最大の利点です。
彫刻の正確さは彫刻機にかないませんので、有効に使えば、美しい印影を作ることが出来ます。
しかし、どうしても整いすぎる傾向がありますし、整えないという表現には不向きです。
彫刻機も手間ひまをかければ、よい印影が出来ますが、
効率的に作ろうとしてしまうことが、印影の出来に影響する場合が多いです。

「手彫り」の平均と「手仕上げ」の平均を比べれば、手彫りがいいでしょう。
しかし、印影の特徴などはそれぞれの印章店により違いますので、一概には言えません。

最後に・・・

少ないながらも本当の手彫り印鑑をお求めになるお客様もいらっしゃいます。
正しく表記がされないと、そのお客様に本当の「手彫り印鑑」が届かなくなってしまいます。
こんなことがあってはなりません。
販売店が「手彫りなんて意味がない」と思うことは勝手ですが、本来それはお客様が判断することで、
手彫りと表記していい理由にはなりません。

また正しい表記が行われないことで、 「手仕上げ印鑑」と正しく表記している印章店が不利になるというもう一つの不公正が生まれます。 正直者がバカを見るような社会にしないためにも、手仕上げでも構わないというお客様には、 ちゃんと「手仕上げ印鑑」と表記している印章店でお求めいただきたいのです。

残念ながら「手彫り」「手仕上げ」の表記は現在信頼できるものではありません。
お客様が「手彫りの利点」「彫刻機を使う利点」をしっかり理解し、 よりよい印鑑と出会っていただけるように、上野印房では、出来るだけフェアな情報公開に努めています。

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